2020.08.27
Next Challenge 〜元選手たちの新たなる挑戦〜 vol.3
プロ野球選手からIT業界へ
デジタルデータソリューション株式会社(以下DDS)は、データ復旧のプロフェッショナルだ。その復旧できる領域は幅広く、家庭用のデジタルカメラのデータから、法人の大型サーバーまで手掛ける。
オフィスは東京・銀座、昭和通りに面したビルにあり、
エントランスには警察からの感謝状が置かれ「卓抜した技術力により事件の解決に多大な貢献をされました」などと称えられている。
データリカバリーサービスは11年連続国内シェアトップ、まさに「リーディングカンパニー」なのだ。
そのDDSに、福井ミラクルエレファンツ(現福井ワイルドラプターズ)を退団した塚田貴之さんが入社したのは2019年の11月のことだ。
塚田さんは福井に2年、さらにその前はオリックス・バファローズに2年在籍していた。
-入社の動機を教えてください。
「リーグ主催のセカンドキャリアセミナーで資料を見て、自分のまったく知らない業界だったので、かえって興味を持ちました。
キャッシュレスが進む現代で、すごく伸びる業界だし、どうせやるなら違うことをやってみたいなと」
同社の採用担当者と連絡を取り「会社見学に来ませんか」と誘われ、10月、福井から車を飛ばして東京へ向かった。
職場見学と同時に、会社説明・適性検査を受ける。
すると、
「「福井から何度も来ていただくのは申し訳ない、ちょうど社長もおりますので」と、いきなり社長に面接していただいたんです」
-異例ですね。
「はい。これ、最終面接じゃないかって、さすがに慌てました」
本人も「まさか」の展開だったが、その数日後、内定の報せを受けた。
プロ野球の厳しさ
現在の仕事はお客様からの「SOS」を受けるフロント業務だ。電話を通してお客様の機器の状況を把握し、初期診断へのご案内を行い、機器を送付してもらうまでを担当する。
インタビューの当日は、研修を終え実践に投入されたばかりの時期だった。
指導する先輩社員と「メンター制度」と呼ばれるペアを組み、仕事に臨む。
データ消失、といってもパターンは様々だ。小は個人のパソコンやスマートフォンのデータ復旧から、大は公官庁や上場企業からの依頼もある。
ハードディスクだけでも複数の種類があり、想定されるデータ消失の原因は1万通りに達する。
中には切羽詰まった相談も多い。電話で原因の切り分けを行うことは簡単なことではない。だから日々の勉強は欠かせない。
成長業界は、同時に厳しい競争社会でもある。フロント業務にも数値の目標が厳然とある。
-数字に厳しい世界ですね。
「はい。四半期目標・月間目標・週間目標があります。でも、数字を追うのは苦にならないです。プロ野球はもっと数字に厳しい世界でしたから」
オリックスでの指名は育成1位だった。その年のドラフト指名は10名。
本指名と育成指名では、年俸も待遇も大きく異なる。
スカウトに言われたのは「本指名と育成指名の違いは単純だ。10番目に欲しかった選手と、11番目に欲しかった選手の違いだ」。
塚田さんはそれを聞いて奮起する。
「追いついてみせる。指名順位が間違っていたと思わせてやればいい」
その言葉通り1年目の春からファームで結果を残し、4月に支配下登録を勝ち取った。
しかし、その後は一軍に呼ばれることなく、2年で自由契約となった。
「NPBはみんながあこがれる華やかな世界ですけど、結果が出なければクビですから」
オリックスを退団後、NPBに戻ることを目標に、福井に入団。
2シーズンを戦い、野球からの卒業を決めた。
「野球選手は22歳から25歳までが一番伸びるんです。そこまでで(NPBに)戻れなかったら区切りをつけようと」
(提供:kazuuu)
夢と現実が混じった場所
-BCリーグの後輩たちに一言を。「福井で一緒にやっていた片山(雄哉・2018年阪神育成1位)や松本(友・2018年ヤクルト育成2位)は、試合だけじゃなく、ずっと野球のことを考え続けることができる選手でした。
生活のすべてを野球に捧げるって、分かっていてもなかなか難しい。友達との付き合いもありますしね。やるだけやったら、結果が残る世界です。だれにでも伸びしろはあります。
後悔しないように野球に集中してほしい」
-塚田さんにとってBCリーグはどんな場所でしたか。
「夢と現実が混じった場所、でしょうか。自分の場合は現実が大半でしたが…その割合をどう変えていくかは、選手にしかできないんです」
NPBとBCリーグ。ふたつの野球を体験して、達成感も挫折も味わった塚田さん。
「自分の人生の幅を広げるのはあくまで自分です。今は早く仕事を覚えたいし、結果も出したい」
と新たなステージに挑んでいる。
(文責:ルートインBCリーグ)
[デジタルデータソリューション株式会社]
1999年設立。データ復旧事業のほかにフォレンジック事業、セキュリティ事業の3事業を手掛けている。本社東京都中央区。社員数113名。
ホームページ:https://digitaldata-solution.jp/
[塚田 貴之](つかだ たかゆき)
1993年生まれ、茨城県出身。投手。白鷗大足利高から白鷗大を経て2015年オリックス・バファローズから育成ドラフト1位指名。2016年支配下登録。2017年自由契約となり、2018年から福井ミラクルエレファンツ(現福井ワイルドラプターズ)でプレー。2019年現役引退。
年度 | 試合 | 勝 | 敗 | S | 投球回 | 奪三振 | 防御率 |
2017 | 39 | 5 | 3 | 0 | 76 1/3 | 36 | 3.89 |
2018 | 34 | 1 | 6 | 0 | 66 1/3 | 53 | 16.77 |
2019 | 36 | 2 | 1 | 6 | 38 | 35 | 2.35 |