2019.10.16
Road to 10.17 vol.12 松村 誠矢(富山GRNサンダーバーズ)
50㍍を5秒7で駆け抜ける俊足が武器の富山の“いだてん”。二岡智宏監督によるつきっきりで打撃指導でスイングに力強さを増し、大卒入団1年目で急成長を遂げた。
「二岡監督と一緒に練習できて、打撃は絶対に力がついたという手応えがあります」
兵庫県の出身。山梨・日本航空高を経て、創価大では2年秋と3年春にはベストナインに輝き、4年秋には盗塁王のタイトルを手にした。しかし「もともと足しかない選手。打撃の調子が上がらず、卒業後に行く場所がなかった」と振り返る。
進路で悩んでいた時に「声を掛けてもらった」というのが富山GRNサンダーバーズだった。今年2月、まだ寒い富山・高岡市に行くと、初対面の二岡監督からこう告げられた。
「おまえをこの1年でNPBに行かせる」
松村は耳を疑った。
「自分ですか?と思いました。びっくりしましたが、そんなふうに思ってもらえるなんて光栄でした。大学では足をいかした“当て逃げ”のような打撃で、『それではNPBに行くことはできない』と。とにかく強く振るように指導を受けました」
開幕戦から二番・レフトでレギュラーの座をつかむと、開幕2戦目から5試合連続で複数安打をマーク。その後、一番に抜てきされると富山打線をけん引した。
順調なスタートを切った松村をアクシデントが襲う。5月1日の試合で足に死球を受け、1か月余りの戦線離脱を余儀なくされる。後期に入ると徐々に打撃に力強さを増し、今季は45試合に出場し、打率・285、二塁打6、三塁打2、盗塁16という数字を残した。
「シーズンの最初と最後だけがよかった、という1年でした。ケガなく過ごすことができていたら後悔はなかったのですが…」
そう振り返る松村。ただ、シーズン後にはBCL選抜メンバーにも選ばれ、巨人三軍、オリックスファームとの試合で打撃と俊足を披露した。
「技術的にも精神的にも成長できたシーズンでした。二岡監督から教わったことを胸に、自信を持ってプレーしたいと思っています」
俊足に加え、打撃でも一定の進化を見せた松村。期待を掛けてくれた“恩師”への恩返しの第一歩となるドラフト指名を待っている。
文・写真/岡田 浩人