2019.10.14
Road to 10.17 vol.9 宮野結希(信濃グランセローズ)
高校を卒業して大学へ進学すると4年、社会人の道へ進むと3年はドラフト指名される機会がなくなってしまう。しかしルートインBCリーグをはじめとした独立リーグは、1年で指名が解禁となる。そのため高校卒業後に独立リーグへ身を投じる選手も増えてきた。信濃グランセローズの宮野結希投手もそのひとりだ。
堀越高校から信濃へと進んだ宮野は身長185センチ、体重68キロのスラッとした長身。チェンジアップ、スライダーといった変化球も投げるが、高身長を生かした角度のあるストレートが最大の武器だ。宮野自身もここを見てほしいと言う。それはまるで母校のOB岩隈久志(巨人)のようでもある。
そんな宮野の憧れは、やはり岩隈なのかと思いきや実は違う。
「憧れているのは楽天の則本(昂大)投手ですね。打者が押されるような、そんな気迫がすごいです。ぼくは高校時代のらりくらりで抑えるスタイルだったのですが、投球で流れを変えられる存在になりたいな、と思って名前をあげさせてもらいました」と教えてくれた。岩隈とは真逆のように見える則本に憧れているのは少し意外だ。
9月19日・20日に行われた巨人(三軍)との交流試合では2試合連続で中継ぎとして登板し、ともに1回無失点と結果を残した。
その手応えを聞いてみると宮野は、「チームが勝てたのがよかったです。いつも先発なので連投はしないのですが、悪くなかったです。使い勝手のよい投手になるためにも、もっと練習しないといけませんね」とどこまでも謙虚に答えてくれた。
リーグ戦とは違い勝敗はあまり関係のない交流試合。選手たちにとっては、NPBのスカウト陣に向けたドラフト前の貴重なアピールの場でもある。自分のプレーが思い通りにできれば、勝敗を度外視してもおかしくはない。
しかし宮野はそうではなかった。まず最初にチームの勝利を喜び、そして自分を全面に押し出すよりも、監督が使いやすいように自身を変えていこうとする。
コメントの節々から優しさが溢れ出す。その姿は飄々としており、気迫や闘争心とは無縁にも見える。だからこそ気持ちを全面に押し出す則本に憧れるのかもしれない。
文/勝田 聡